パッチってなんですか?

 うちの研究室の学生が、「え?パッチはパッチだよ」というむなしい回答を先生や先輩から得る伝統的な質問である。要は自分でそれくらい調べろということなんだと思うが、答える側になってみて、実は明確な定義を知らないことに気が付いた。情けない限り。群集生態学の教科書(宮下,野田 2003)によると、

パッチとは、モザイク状の生息場所の1単位を意味する概念。周囲と多少異質でその内部の環境はほぼ均質な小空間であり、同時に種が相互作用しあうことが可能な範囲のこと。局所と同じか又はそれよりも小さいスケール。例えば、寄生虫にとっての宿主1個体を言う。

ちなみに、局所地域

局所地域は、群集の空間スケールをさす概念。局所生態学的に短い単位時間、例えば位置世代の間に全種が互いに相互作用しあうことが可能な空間スケールである(Srivastava 1999)。また、地域局所より通常100倍以上大きな空間スケールとして定義され(Krebs 2001)、全種が出会い相互作用しあうためには、数十世代が必要なくらいにおおきいが、種分化や長距離分散による種組成の空間的負均一性が生じるほど巨大ではないもの。

だそうだ。ふむ、対象生物によってずいぶん違いそうな定義だな。しかし、そうなってみると実験によって設定された方形区をパッチと言うにはある程度厳密な調査が必要そうだ。コドラートとパッチを混同してきたけれど、これからはもっと厳密に使い分けるようにしよう。
 そういえば昔、先生からよくこういう回答をもらっていた気がする。もっとましな質問が出来るようになりたいという最初の動機は、こういうところにあったのかもしれない。となると、先生の教育活動の一環だったのだろうか?しかし、研究室中が殆ど修士1年以下という時代には、この手以外の回答をもらっている学生を見たことがなかった。他の大学の先生が丁寧に分かるまで答えてくれたのに非常に感激したことを思うと、単に先生が横着だったのかもしれない。