K研昼ゼミ

1)Mさんの論文紹介:「Reproduction and hybrid load in all-hybrid populations of Rana esculenta water frogs in Denmark.*1
とても面白いカエルの論文でした。トノサマガエルの一種である、Rana lessonae(L),Rana ridibunda(R)とその交雑種(?)である、Rana esculenta(ES)についての研究。そもそも交雑種で、かつ雑種の適応度が低い*2なので、LとRの二種が同所的に存在するような場所でなくては、ESはでてこない。はずなんだけど、どうもESだけが存在する地域があるらしい。なんでESだけの集団が維持されているのか?というのが、この研究の主眼。結果だけぽつっと書くとあまりよくわからない(と思う)のだけれど、どうもRとLの間の子供(ES)に二倍体だけでなく、二倍体でない個体(三倍体とか)がおり、その個体とと二倍体の個体の交配は、正常(?)に行われているために、ES集団が存続するのではないか?ということを、マイクロサテライトを使って調べた論文。
???そもそも動物に異数体とか、三倍体とかって存在しうるの?正常に育つの?生きていけるものなの?交配するの?子供の残せるの?というところからして、このカエルという材料はとても面白かった。Y助手いわく、動物において集団の維持に関わっている例はとても少ないのじゃないかな、とのこと。多分、発生とか細胞とか遺伝とかそういう知識のある人にこの論文を説明してもらったら、また別の面白さを引き出してもらえるのではないかと思った。
でも、Mさんの発表は、絵が満載ですごくわかりやすかった。有用な議論が出来るほど私のほうに知識があるわけじゃないので、なんとも言えないのだけど、聞いてるだけでちょっと理解できるだけでも十分楽しい、そういう論文紹介だった。
2)Gさんの論文紹介:「Scaling up keystone effects from simple to complex ecological networks *3
ものすごく簡単に述べると、キーストーン捕食*4の共存を促進する機構が、生態系に存在する他の種からどういう影響を受けるか?ということについて調べた論文。
結果は、簡単に言うと、系に流入する資源量(生産者の資源量)や生産者を捕食する他の捕食者の存在による、キーストーン捕食者によって共存を促進されている種たちへの、直接的な力が重要なのであって、それ以外の系全体の特性はあまり重要ではない、というものだった。
このセミナー中にでた意見では、このモデルではキーストーン捕食者を捕食する種がいなかったり、キーストーン捕食者に捕食される(競争的に)優位な生産者を捕食するほかの種がいなかったりで、システムが全体的に実際の状況を反映していないし、その不自然な特徴が、この結果を生み出したかもしれないよね?というものがあった。
この発表を聞いて、面白いなぁと思ったのは、「生態学的に言われている相互作用の効果を、もっと複雑な現実に近い系で研究しよう」という動きが、最近すごく活発になっているなということと、この論文で使われた、回帰木なる手法が気になるな(理解できなかったけど)ということだった。ネットワークを解析する上での重要な手段になるのかもしれない。

*1:Evolution 2005, 59(6), 1348-1361, DG Christiansen, K Fog, BV Pedersen, JJ Boomsma

*2:詳しく言うと、RとLの子供のうち、二倍体の個体同士の子供は致死

*3:Ecology Letters(2005)8:1317-1325,Ulrich Brose, Eric L.Berlow, and Neo D.Martinez,

*4:資源をめぐる競争をしている数種のうち、競争に強い種を食べる捕食者がいると、競争が緩和されて共存が促進される。というやつ。