2006日本微生物生態学会学際シンポジウム

 宮教大で行われた「土壌における原生生物の多様性と微生物との相互作用-陸圏と水圏、相互の生態系の比較を通して土壌微生物生態を見つめ直す-」というシンポを聴いて来ました。実はうっかり遅刻して、最初のFoissner教授の話は聞き損ねて残念でした。


野外の陸域、水域生態系では、せん毛虫、べん毛虫、アメーバなどの小さい生き物がもっと小さいバクテリアなどを食べることで、それらより上の栄養段階の生き物が支えられているという側面が、植物が光合成することでもたらす生産性と同程度、もしくはそれ以上に大きい力を発揮すると言われているのだそうです。そこで、生産者であるバクテリアを食べる生き物の原生動物が重要になるのだそうです。で、それら原生動物の最新の研究がどの辺りにあるのか、ということが今回のシンポのテーマでした。


一番面白かったのは、陸域の植物の周囲ではホルモンループなるものがあるらしいということです。植物の死骸を食べたバクテリアを食べた原生動物が植物ホルモンを排出するそうです。だからループ。しかし、まだ仮説の段階らしい*1。世の中ではイロイロなところでCNR*2があるんだなぁ、と感心しました。びっくり。あ、nutrientじゃないか。hormoneだから、CHR?


しかし、こういうシンポを聞いていると、私が面白いなと思っている捕食-被食系という概念はいったいどれくらい重要なことなのかな、と思ってしまいます。例えばキツネとウサギの捕食-被食関係は高校の教科書に載るくらい有名な話だけれど、そのストーリーが原生動物のような小さい小さい生き物にも、同じように適用できるのだろうか?適用できたとして、それが生態系全体の理解のために、一体どれくらい役に立つのだろうか?と考えてしまいました。いや、こういうことを考え始めるとキリがないわけではあるんですが。


新しい知識

  • 植物の根は多糖類を出したり、根が削れたりしながら土壌中を伸びてゆく。それらの多糖類やかけらをエサにバクテリアが増え、それらを原生動物が食べて排泄した栄養が植物にリターンすることがある。
  • 原生生物が存在するとバクテリアの活性が高まることがある*3
  • 原生動物は、陸域、陸水、海水、汽水で70%程度が共通種である。
  • アメーバには有殻タイプと無殻タイプがいる。
  • マメ科植物が多い場所では大気中の亜酸化窒素の濃度が上がることがある。それは、根瘤のAgingによって起こっているかもしれない。
  • 水域の原生生物が関係する生態系(microbial food web)の研究は大きいスケールで、陸域の原生生物が関係する生態系(腐食連鎖)の研究は小さいスケールで行われている。
  • 陸域の腐食連鎖の研究は、生産効率などの速度を研究しにくい。
  • 海の有機物生産の95%以上は微小ラン藻(SynechococcusやProchlorococcus)が担っている(遠洋では)。

*1:何年か前にNatureに載ったらしいけれど、スライドが遠くて出典までメモ出来ませんでした。残念

*2:Consumer-driven nutrient recycle

*3:カニズムは常識なのかあまり説明されなかったので分からなかったです。