U研論文読み会その2:Predation and priority effects in experimental zooplankton communities*8

 移入順と捕食者の存在によって競争の結果(生物量)が異なるという仮説を動物プランクトン3種を用いて実験した研究です。タンクに水道水と植物プランクトン*1を入れ、15日間の時間差で動物プランクトンを入れる。捕食者はChaoborus obscueipes(フサカ)。動物プランクトンは、Daphnia obtusa, Daphnia magna(オオミジンコ), Simocephalus vetulus(オカメミジンコ)
結果は、捕食者がいない場合には、D.magnaを最初に入れて、その後にD.obtusa,S.vetulusの順で移入したタンクと、D.obtsusa,D.magna,S.vetulusの順で移入したタンクや、D.obtusa,S.vetulus,D.magnaの順で移入したタンクには、D.magnaの生物量に差が無いが、D.obtusa,S.vetulus,D.magnaの順で移入したタンクとS.vetulus,D.obtusa,D.magnaのタンクやS.vetulus,D.magna,D.obtusaのタンクには、D.obtusaの生物量において差がある*2ので、D.obtusaにはpriority effectsがあるのだろう、というもの。捕食者がいると、食われにくいS.vetulusが圧倒的に勝者になるので、差は見られなくなるとのこと。


議論の際にU教授が、このpriority effectsのことを「創始者効果」とずっとおっしゃっていて、それは違うんじゃないかなぁ、とずっと頭の片隅で考えていたら*3、なんでそういう結果になったのかという議論を聞き損ねてしまいました。そもそも発表者の話を聞いていた際に、このpriority effectsを最初に侵入したかどうかを意味するのではなくて、移入順番のことを表していると気付いていなくて、混乱していたこともあります。失敗。たしか栄養塩のリサイクルの効果じゃないか、とか言っていたような気がするのですが。いや、それで説明できないような気がする。。。


いずれにしろ、捕食者がいるとD.obtusaのpriority effectsは有効でなくなるらしいので、この論文のもっとも重要なポイントはそこであるようです。


創始者効果」の訂正から、議論は論文とは離れてしまって、侵入時の遺伝的多様性と適応の話になってしまいました。ミジンコの類は、一度に多数の個体が移入する可能性があるらしく*4、移入した時点ですでに遺伝的多様性が高いケースがあるかもしれないらしいです。なので、遺伝的多様性の異なる集団の侵入実験を組んだら面白いのではないか、とU教授が。しかし、今ここでまとめ直していても、やっぱりその実験の目的がよくわからない。。。priority effectsと遺伝的多様性の関係を調べるのかな?


侵入可能性が遺伝的多様性に依存しているという仮説?は実験的にもしくは野外で証明されているんでしょうか?

*1:Scenedesmus obliquus

*2:D.obtusaが最初のタンクのほうが他より生物量が多い

*3:ちゃんと途中で違うと言いましたが。

*4:本当かな?少数の個体が大量に増殖するんじゃないのかな?