U研論文読み会その1:Have we overemphasized the role of denitrification in aquatic ecosystems? A review of nitrate removal pathways*7

 ずいぶん時間が経過してしまいました。Frontiers in Ecology and the Environmentの論文です。恥ずかしながら、私はこれまでこの雑誌の存在すら気づいていなかったのですが、Ecologyの姉妹雑誌のようです。


 このレビューは、陸上水系の窒素循環についての研究です。テーマは水系の上流に流れ込んだ窒素の量(硝酸)が海に流れ込むまでの間に、何かしらのパスで水系外へと出て行ってしまうのだそうです。で、そのパスとして、今まで生物の(呼吸的な)脱窒作用と生物体内への取り込みが重要視されていたのですが、どうもそれだけでは説明できない部分がかなりあるようで、その二つ以外の四つのパスについて考察しているものです。
これまで注目されてきたパス

  1. 生物的なプロセスでNH_(4)^(+)になる。
  2. 植物によって吸収される。
  3. CO_(2)や有機炭素を使って、脱窒によってN_(2)やN_(2)Oになる

これまで注目されてこなかったパス

  1. 嫌気条件で、H_(2)Sを電子供与体、NO_(3)^(-)を電子受容体として、chemolithoautotroph(化学合成独立栄養生物)がNH_(4)^(+)を作る。
  2. Anamox:嫌気条件で、かつ比較的低温な状況下で、微生物的な過程でNO_(2)^(-)とNH_(4)^(+)からN_(2)が作られる。有機物によって阻害される*1
  3. 嫌気条件で、H_(2)Sを電子供与体、NO_(3)^(-)を電子受容体として、chemolithoautotroph(化学合成独立栄養生物)がN_(2)を作る。
  4. NO_(2)^(-)が生物学的にN_(2)になる。

 どれがどれくらい重要なのか、また、どんな生物がどのような生化学的プロセスで持ってこれらのパスを進めているのかは、よくわかっていないものもあるようです。例えばこれらのパスのスピードが種によって異なるとか、そういう仕事はまだまだ行われていないようです。生物が関わっているのは間違いないそうですが。微生物は飼えないものがとても多いそうなので、仕方がないのでしょう。しかし、U教授曰く、これらのパスが起こりうる条件を考えると、これらが重要な湖も存在するだろうが、様々なタイプの湖で広範に起こるとは言えないらしいです。


新しい知識

  • 有機物が少なく、深く、H_(2)Sがあるのが火山湖の特徴。
  • 有機物が少なく深い湖は、湖底に嫌気的な環境がある。
  • H_(2)Sは、脱窒のプロセスを阻害する。*2
  • 植物プランクトンにとって最も効率のよい窒素は、アンモニア



 このレビューは、私にはかーなーり難しかったのですが、知識としては把握しておこうと思ってまとめています。なので、メモし間違ったりいろいろしている可能性があります。その場合はごめんなさい。

*1:競争的に阻害されているのかもしれない

*2:阻害の仕方は分からないです。生物的な競争かもしれないし、化学的に阻害されるのかもしれない。