K研昼ゼミその1

Y君の論文紹介:「Local adaptation but not geographical separation promotes assortative mating in a snail」*1
海にはタマキビという巻貝がいる。そいつらは、側所的もしくは同所的(つまり異所的でない)種分化のモデル生物として良く知られている。おおざっぱにいうと、波の荒いところと、波は荒くないけど捕食者(カニ)が多いところのそれぞれで、波の荒いところのタマキビは波にさらわれないように小さいタイプ、カニの多いところでは食べられないように、殻が大きく厚いタイプの二つがいて、それらの間には遺伝的な交流があるらしい。しかもイギリスやスウェーデンなど、複数の場所で同じようなことが起こっているらしい。
で、その遺伝的交流がある(かなり古い先行研究)のに、生息場所によってはっきりタイプが分かれているのは、多分なんらかの繁殖に関わる形質にも違いがあるのではないか?ということで、波の荒い場所のタマキビと捕食者の多い場所のタマキビを、それぞれいくつかの場所から取ってきて、交配実験をした、という論文。
結果は、波の荒い場所のタマキビは、やはり波の荒い場所のタマキビを選んで交配するということがわかった。けれども捕食者の多い場所のタマキビのほうは、そもそも実験であまり交配しなかったので(実験失敗?)どちらのタイプを選ぶかははっきりしたデータが出なかった。*2波が荒い場所のタマキビは小さくて、捕食者の多い場所のタマキビは大きいので、単にサイズの問題では?ということを否定するべく、同じようなサイズの二つの場所のタマキビを用意して選ばせると、やはり波の荒い場所のタマキビは波の荒い場所のタマキビを選ぶらしい。
種分化の論文の話を聞くのは久々なので楽しかったです。

*1:ANIMAL BEHAVIOUR (2005) 70:1209-1219,JOHAN HOLLANDER, MATS LINDERGARTH & KERSTIN JOHANNESSON

*2:まぁ、けどちゃんとやったら差は出るらしい。