U研論文読み会その1

K君:A framework for the assessment of top-down vs bottom-up control of heterotrophic nanoflagellate abundance*1
従属栄養のべん毛虫(HNF)のabundanceがbottom-up効果(エサ)で決まっているのか、top-down(捕食者)で決まっているのか?を、様々な論文のデータをメタアナリシスした研究。
というか、どうすればbottom-upかtop-donwかを判定できるか?というモデルを作った論文といったほうが正しいような気がするけど。野外の観測データから、横軸にエサであるバクテリア、縦軸にHNFをプロットすると、各バクテリア量におけるHNFの最大値のラインが出てくる。このラインが、あるバクテリア量のもとで存続できるHNF量の最大値と考えることが出来れば、このラインに近ければ近いほどbottom-up効果が強く、そうでなければtop-down効果が強いのではないか?という主張*2。ちなみに、この論文の頑張っているところは、そのラインを描くための理屈を考え出して、いくつか数式モデル*3をつくってHNFの概算値をバクテリア量から推定したりしてみているところだ。しかし、そのモデルからでたパラメータを適当に平均してみたりするところが、すごくナゾな解析だったと思う。そんなことするくらいなら、モデルなんて考えなくてもいいんじゃないの?というのがK君の意見。
U先生曰く、「この論文、センスはないけど、理屈をつけようという意欲は買う」だそうです。

基礎知識

  • HNFは、heterotrophic nanoflagellateの略。
  • HNFは、microbial-loop(バクテリアを生産者?とした物質循環)を、解析する上での重要な要素である。

*1:MARINE ECOLOGY PROGRESS SERIES. Josep M. Gasol, 113: 291 – 300, 1994

*2:ただし、HNFのエサはバクテリアのみであるという仮定の下で

*3:例えば、HNFの増殖速度、ある水温のもとでのHNFのgrazing rateなどをもとにバクテリア量からHNFの量を推定するような式。