U研論文読み会その1Adaptive microevolutionary responses to simulated global warming in Simocephalus vetulus: a mesocosm study

 ここ数回、いつもは金曜日にあるゼミが月曜日に移っていて、ついうっかり忘れていて2回もK君に電話で呼び出してもらってしまいました。すんません。


 Grobal Changeの生物への影響は、生物によっても地域によっても色々なプロセスが予想されていますが、今回は、水系生態系で懸念されている温度変化が動物プランクトンに与える影響について。温暖化の影響によって湖水の水温は上昇することが考えられています。しかし、予測される温度上昇で動物プランクトン群集を飼育してみると、組成の変化が小さいことが分かっているそうです。そこで、なぜ温度上昇で群衆構成が変化しないのか、という問題に対して、1)表現形の可塑性がある、2)進化している、という二つの仮説をたてることが出来ます*1。この研究ではこのうち、2)進化している、という仮説をエンクロージャー実験で、実際に将来の水温を作り出して、オカメミジンコSimocephalus vetulusの生活史形質の進化(?)を調べています。


実験的に野外の湖環境*2と野外の群集をそのまま使って、3種類の水温*3のもとで1年間飼育し*4、その後の生活史形質の比較を行っています。測定した生活史形質は、3つの温度条件*5の下での、第二抱卵までの生存率、第一、第二抱卵までの時間、第一、第二抱卵での抱卵数、それに、これらのパラメータを使った各ストレインの繁殖価*6です*7


 結果は、生存率では1年間飼育した時の水温が高いストレインは、生活史形質測定環境の水温が高いほど生存率が高いというものでした。しかし、最終的な繁殖価は1年間飼育したときの水温によって影響されないということがわかったそうです。


 話をきいていて、ずっと落ち着かない気分になったのは選択実験のやりようが大雑把過ぎるような気がするということと、生活史形質の測定が最後の一回しかやられていないということです。最初のオカメミジンコ集団を取ってくる方法も、泥と水を取ってきて休眠卵と現存個体群を両方使っている(ことになって)います。それと、繁殖価を求めるときに、生存率はどのストレインも一緒という前提で求めているのですが、実際に生存率のデータがあるのだから、それを使って結果を求めた方がよりクリアに予測を裏付ける結果を示せたのではないかと思うのです。U教授が邪推するところによると、「やってみたけどあまり良い結果じゃなかったんじゃない?」ということでした。この結果だけで、表現形の可塑性を否定することは難しそうな気がしました。


 最後に細胞質遺伝の話が出たような気がするのですが、細胞質遺伝が世代を超えて維持されるという話だったのかな。。。?分からなかった。表現形の可塑性とどういう関係があるのかが分からなかった。

*1:別にAlternativeであると述べているのではないと思います

*2:エンクロージャー実験

*3:今のまま、予測された約50年後の水温(最大で夏に+4℃)、約50年後+その50%(最大で夏に+6℃)

*4:概算で15から20世代になるそうです。

*5:18℃、22℃、26℃の3つ

*6:ここでは適応度の指標として使われています。

*7:測定したのは、1年間飼育したものを2個体とってきて、それらをさらに20℃で2世代飼育した後の生活史です。