U研論文読み会その1:Allochtonous input and trophic level heterogeneity: impact on an aquatic food web*4

セミナーの発表中にも意見を述べたのですが、この論文紹介は正直言ってよく理解できなかったのです。なので、うまくまとめられない気がします。何が原因なのかというと、発表者がほとんど論文のIntroductionを説明しなかったので、研究の意義やなんのためにこの実験を組んだのかが良く理解できなかったのです。
この論文は、おおざっぱに目的を述べると、ある栄養段階内にheterogenityは、隣接した栄養段階の生物量に正の相関を生み出す原因となるのだそうです*1。ここでいうheterogenityというのが何を意味するのか良く理解できなかったのですが、多分、ある栄養段階の群集内に、他の栄養段階に与える影響が異なる種が存在することではないかと思います。でも間違っているかも知れません。で、このことは開放系では調べられてこなかったのですが、開放系と閉鎖系では結果が異なることが予想されます*2。通常、湖、河、海などは開放系であるので、実験で調べてみようという研究です。


実験は、一次生産者として植物プランクトン(Senedesmus)と付着藻類(ササノハケイソウ)を、Grazerとして動物プランクトンであるDaphnia(ミジンコ),Chydorus(マルミジンコ),Daphnia+Chydorusの3タイプを用意しました。さらに、Openな系として植物プランクトン*3が入ってくる系とClosedな系としてなにも入ってこない系を作ります*4。Daphniaは付着藻類は食べませんが、Chydorusは付着藻類も植物プランクトンも食べます。ここで良く理解できなかった点は2点あります。一つは、Grazerレベルのheterogenityを達成するとき、なぜ植物プランクトンのみを食べる複数種の動物プランクトンと、付着藻類も食べる複数種の動物プランクトンの実験はしなかったのか?ということです。そうでなければ、正確なheterogenityのコントロールにはならないと思うのです。二つめは、なぜ植物プランクトンだけが流入するのかという点です。栄養塩の添加は実験はなぜ行われなかったのか?通常の野外の系であれば、植物プランクトンだけが流されて入ってくるということはあまり無いような気がします。*5多分私には分からない理由があるのじゃないかという気がするのですが、良く分からなかったです。


結果は、Openな系ではDaphniaのbiomassにDaphniaのみの系とDaphnia+Chydorusの系では、Daphのみの系の方が有意に多く、Closedな系では差がなくなります。Chydorusのbiomassは、Chydorusのみの系とDaphnia+Chydorusの系では、Openな系ではDaph+Chydoの系のほうが有意に多くなりますが、同様にClosedな系では差がなくなります。なぜこのようなことがおこったのかというと、実験では系に栄養塩を添加していないので、Closedな系では植物プランクトンの質が悪くなり、動物プランクトンはみな数が抑えられてしまったために差が出なくなりました。また、Openな系では栄養塩源が植物プランクトンの細胞内部にあるものだけなので、Daphniaがいると植物プランクトンの栄養塩がリサイクルされて、餌の質がどちらもよくなるのだそうです。質だけでなく、量もよくなるようです。しかし、質の問題を云々するなら、サンプリングした生産者の栄養塩を測定するべきだろうと思いました。


まぁ、とにかく、私の中で色々なことが色々によくわからないままに、終了時間が来てゼミが終わってしまったので、不満というか消化不良でした。謎ばっかりの長い記事ですみません。

*1:通常、隣接した栄養段階の生物量は負の相関を持つことが多いです。捕食者が多いと被食者が少ないなど。

*2:予想は出来るのですが、この段階でどのあたりが不思議になるのかはちょっとイメージできませんでした

*3:水とともに追加。植物プランクトンを洗って入れるので栄養塩は水には含まれない。

*4:3×2で6種類

*5:動物プランクトンだって流されてくるような気がしますが、まぁ、Openな系であれば結果がマスクされるだけで実験の結果は予想可能かと思うので、そちらは良いかも知れません。