U研論文読み会:その1

助手Mさんの「Coupling of boreal forests and lakes: effects of conifer pollen on littoral communities.*1
 常緑樹林に囲まれた湖には、落ちてくるリターが圧倒的に少ない。風媒の松林に囲まれた湖では、ある一定時期の栄養塩供給として、なんと花粉があるのではないか?と以前から言われていたらしい。しかし、野外で調べた研究はなかったので、一つやってみました、という研究。
今回の使用湖沼は、貧栄養湖。調べたのは、実際に落ちてくる花粉の量とそのときの溶存有機態リンと炭素。その他にメゾコズム実験で、タンクを沈めて量を変えて水に花粉を溶かしてやるもの。調べるパラメータは、リンなどの栄養塩と、動物プランクトンのbiomassとクロロフィルなど。結果は、みごと花粉の落ちてくる量と溶存有機態リンや炭素に相関があったし、花粉添加実験ではコントロールに比べてクロロフィル量が増え、動物プランクトンも増えました、というものだった。


新しい知識

  • 風媒の植物の花粉散布量は、一時的ではあるにせよ、湖のリン供給源になりえそうだ。
  • 花粉が水に落ちると24時間以内に、結構な量の栄養塩が溶け出す(最大60%くらい)。

*1:Graham, M. D., R. D. Vinebrooke and M. Turner, 2006, Limnol. Oceanogr. 51: 1524-1529