K研昼ゼミその1:Y助手の研究発表

 前半はレビュー的な論文紹介だったので、それをちらりと。毎度の事ながら、Y助手の保持しておられる情報は海のようで、私には全部まとめられないので、気になったところの抜粋です。
 セイヨウオオマルハナバチというヨーロッパに分布するマルハナバチは、地域などによって、腹部と胸部の黒、白、黄色などの体色にバリエーションがある。必ずしも集団一つで1つの色タイプが対応しているわけではないらしいけれど、少なくともカナリー諸島、コルシカ島、サルジニア島などには、特異的な色のタイプの集団が存在している。で、それらに対して様々な研究がなされているらしい。
 一つ印象に残ったのは、サルジニア島に住むタイプは、他のタイプに比べて赤い色の花に選好性が高いということ。ハチ(マルハナバチのみ?)は普通、緑と赤が同じに見える色盲であるといわれているらしいので、新しい発見だし、サルジニア島に赤い花がどれくらい存在しているのか?とか競争者の存在とかを調べると、色々と発展性がありそうだと思った。
 マルハナバチの色のタイプが、どんな意味を持つのか?ということに関しては、まだよく分かっていないことがあるようだが、3つによって決まっているのではないか?とのこと。一つは、マルハナバチ同士の同種-多種認識、もう一つは、ミュラー型擬態*1、最後の一つは系統的制約。最初の認識による選択圧では、同所的に生息する他の種のマルハナバチと違った体色になるが、二つ目のミュラー型擬態では、他種と同じ体色になる可能性があると思う。例えば捕食者の多いところでは、同じところにいる他の種の模様と似てくることがあるかもしれない。

*1:毒を持った生き物同士の見た目が似てくること。似ていると、捕食者が「この模様はマズイ、毒がある」と学習するスピードが速くなるので、適応的だと考えられる。マルハナバチは刺す。