K研昼ゼミ

1)Extraordinary lifespans in ants: a test of evolutionary theories of ageing*1
 「生物はなぜ老化するのか?」という問題には二つの答え方があるらしい。進化理論的説明と純粋な生理学的な説明。なんて言ったかな?仮説の名前忘れた。進化理論的説明というのは、その中にも二つの説があって、一つは外的要因による死亡率が高い場合には、年を取ってから発現する有害な遺伝子が遺伝的浮動によって蓄積する(選択がかからないので除去されない)ので老化するというもの。もう一つは、若いときには有利に働くが年を取ってから不利に働く遺伝子によって老化するというもの。この論文は純粋に生理学的な問題なのか、進化学的に老化を説明できるのか?ということを社会性昆虫のアリを使って系統解析で調べた研究。進化理論的に老化を説明できるかどうかは、外的要因による死亡率のばらつきと寿命を比較することで研究できるらしい(生理学的説明では、外的要因に関わらず長く生きれば老化する)。もっと新しい研究では進化理論のどちらで説明できるか?というようなことまで調べられているらしい。
 若いときに有利な性質を持つかどうかはともかくとして、「年をとってから有害に働く遺伝子」ってどんなものが想定されているのだろう?テロメア?そうなのか?よくわからない。。。
2)Population genetic structure of three pond-inhabiting Daphnia species on a regional scale (Flanders, Belgium)*2
 Daphnia3種で、集団間での遺伝的距離と地理的距離や生息場所の面積との間に相関があるかどうかを調べた研究。発表者も指摘していたけれどアロザイムを使っているので少し手法が古いようだ。面白いのは、遺伝的距離と地理的距離に相関が出ない種があること。これを説明するのに、創始者効果が強く働くからだと言っているらしい。monopolization仮説というものがあって、それは、単為生殖する生物は、初めに侵入した個体の中に環境に適応したタイプがいると、その個体が急速に生息地に広まって、他の個体が入ってきても侵入できないという考え方らしい(多分)。Daphniaでは、マイクロサテライトで調べるとあっさり集団間での差が出てしまうのか、それともやっぱり出ないのか、新しい研究に期待。

*1:Laurent Keller AND Michel Genoud,NATURE 389 (6654): 958-960 OCT 30 1997

*2:ERIK MICHELS, ELKE AUDENAERT , RAQUEL ORTELLS AND LUC DE MEESTER, Freshwater Biology (2003) 48, 1825–1839