K研昼ゼミ:Resolving the Paradox of Stasis: Models with Stabilizing Selection Explain Evolutionary Divergence on All Timescales*6

パスタ皇子の発表でした。短期的には速い進化が現在観察されているのにもかかわらず、進化的時間を通して長期的に形態が維持され続ける理由を説明する仮説にはいくつかあるらしいですが、もっとも有望視されている(?)のが、安定化選択なのだそうです。しかし、安定化選択にはいくつかの矛盾があって、その最も大きな問題点は、「安定化選択がそんなに長期的に続くわけではない(環境が変化するから)」なのだそうです。で、数種類の変動する安定化選択のもとで*1、集団の多様性と形質値の変化を量的遺伝モデル(!)*2で調べ、実際のデータと比較した研究。
結果は、長い時間変化のなかで一度だけ安定化選択の中心がずれるというタイプの選択が、短期間での遺伝的多様性の大きさと、長期間での形態の安定性を確保できるらしいです。


しかし、K教授が「短期的な遺伝的多様性の高さと、長期的な形態変化の小ささは、遺伝分散の時間的変化を考えれば十分説明がつく。」とおっしゃって、この論文の存在価値そのものが良く分からなくなる、という事態に落ち着いてしまいました。まぁ、私もK教授の意見に賛成で、要旨を見た時点で同じ様に考えていたので何も言うつもりは無いのです。他にも、形態のデータの使い方(大量の分類群をまとめて使っている)やデータと合うかどうかの判断の仕方も???と思うようなところが結構ありました。

*1:これって変動選択っていわないのかなぁ。。。とゼミの最中ずっと考えていた。

*2:もちろん、遺伝分散が変化しないモデルです。最近は遺伝分散が変化する集団における量的遺伝モデルもあるようですが、複雑過ぎて量的遺伝モデルの価値が薄れてしまうような気がします。