U研論文読み会その1

S君の「Seasonal and ontogenetic changes of mycosporine-like amino acids in planktonic organisms from an alpine lake.」*1
MAA(mycosporine-like amino acids)なる物質があるらしい。どんなものかというと、紫外線を吸収し、かつ抗酸化の能力もあるという、まさに美肌にとっては夢のような物質。で、この物質、海のプランクトンではよく研究されているのだけれど、湖のプランクトンではあまり調べられていないので、どんな生き物がどれくらい持っているのかとか、どんな季節に多いのかとか調べましたという研究。


湖でUVと言ったら高山湖沼というくらいで、この論文でも高山湖沼で湖に雪が積もる時期と、そうでない時期の植物プランクトンではクロロフィル量あたりのMAAの量を、動物プランクトンでは乾燥重量あたりのMAA量を季節ごと、水深別に調べた。それによると、湖に氷が張ってその上に雪が積もる*2ような時期の植物プランクトンにはMAA量は少なく、雪解けが起こるころから夏にかけてはMAA量が多くなるという結果だった。また、動物プランクトンはMAAを体内で作ることが出来なくて、植物プランクトンが持っているMAA量を体内に取り込む形になるらしい*3。で、植物プランクトンと同様に動物プランクトンも、夏に多くなる。


そもそもMAAという物質事態が面白いので、結果はまぁいいかなぁと個人的には思った。けれど、湖の水深別のMAA量などのグラフは、UVの水深に対する減衰量とか入射量とかの結果が示されていなくて、どうもイマイチだったと思う。あとは、植物プランクトンの種組成が何一つ示されていないので、MAAの鉛直分布もその辺になにかカギがあるのかもしれないなという議論が出たり。
新しい知識

  • 紫外線吸収剤兼抗酸化物質であるMAAという物質

*1:Barbara Tartarotti and Ruben Sommaruga, Limnology and Oceanography,51(3), 2006, 1530-1541.

*2:最大で2mもつもるらしいです。

*3:なんらかの蓄積機構があるかどうかまでは分かっていないらしい