河合香織「セックスボランティア」

この本は、「障害者への性の介助」が全体のテーマだ。河合香織という人が、様々なケースに関わる人々にインタビューして、思ったことをつづっていく。
介助される人とする人の間の恋愛とか、夫婦へ介助とか、海外事情とか、知的障害者(って言うんだっけか?)への教育とか。それぞれの一つ一つに問題があって、この本の中でその問題に回答が得られているのではない。著者は初め、介助に関わる人々におっかなびっくり近づいていく。介助の現場そのものにすごく衝撃を受けているし、違和感を感じているし、逃げ出したいような気持ちになる。介助に関わる人々と著者の間には深い溝がある。そして、そのことを隠さずに正直に文章にしている。でも、少しずつ慣れるにしたがって、著者の視点はその人々に近づいて寄り添ってゆく。
私は何かのボランティア活動に参加したことは無い。それに今までボランティアに興味を持ったこともなかった。というか正直言ってちょっと苦手だ。多分、ボランティアはとてもはっきりとした例で、そこまではっきりしてはいないけれど、自分の生活の中で、誰かに助けられることも助けることもあると思う。私は、誰かに助けられたり助けたりすることがニガテだ。だから、ボランティアも苦手なのだと思う。
けれど、この本の中で、道筋みたいなものを得られたような気がした。最後の「結局、性の介助の問題は、介助する側の性の問題と同じ。自分の問題と同じ」という言葉がそれだ。誰かに助けられることも、誰かを助けることも、結局のところ、その相手に近づくことなのだなと思うようになった。そのことは、自分にとって重要なことだと感じた。