論文が書けないという心

 臨床心理学者のチャック・スペザーノ博士という人がいます。その人が博士論文を書けなくなったときのエピソードを教わりました。とても感じ入ったので日記に書いておこうと思います。


 チャック博士は、論文を書き続ける中で、どんなに頑張っても書き進められないということがあったのだそうです。そのとき博士は、心の奥底をよく感じて、自分の「物語」に気が付いたのだそうです。


 博士の両親は、彼が子供の頃に両親が離婚して別れてしまったのだそうですが、彼の中で「論文を書き上げて卒業式に出ると、そこには自分の両親が仲直りして自分を祝福してくれる。」という物語があって、その物語に固執している自分の心が、前に進むことを恐れていたのだそうです。たとえ論文を書き上げて卒業式に出たとしても両親は仲直りするわけではない、ということを博士の心の奥のほうで分かっていたけれども、その物語を手放さないという利益を得るために、論文を書くのが滞っていたのだそうです。


 現実は自分の心の投影なのだそうです。現実を変えようとすることは、映画館で映し出されている内容を変えるためにスクリーンに何かをしようとすることと同じなのだそうです。もし、映し出されている内容を変えたければ、映写機の側に行ってフィルムを換える必要がありますよね。自分の周りにある現実が気に入らなければ、自分の心を変えればいいということだそうです。