NHK音楽祭2005ハイライト

 をテレビで見た。先週も観たけど感想を書き忘れたので、ここに書きます。どっちも観ようと思ってわくわくして待っていたということじゃなくて、たまたま日曜日の夜にのんびりした気持ちでテレビをつけたら、他に観たいものもなかったので観始めた番組。だけど、演奏に引き込まれて夢中になってしまった。
1)前半
 前半は、小菅優というピアニストとサカリ・オラモ指揮のフィンランド放送交響楽団という組み合わせと、N響小澤征爾とマーカス・ロバーツトリオの組み合わせで、2回にわけて行われた演奏会をハイライトしたもの。
 とくにクラシックに詳しいわけではないし、日常的に聴いているわけでもないけれど、小菅優という人の素直でひたむきに音楽に向かうピアノとフィンランドの温かみのあるオーケストラには、なんだかほくほくするような気持ちにさせられた。(実は途中見なかった部分があったので、あまり感想をかけないのだけども。)
 小沢征爾の方は、子供のためのプログラムというやつで、演奏の前に小沢征爾による「運命」の解説がなされていたのが面白かった。あの有名な「ダダダダーン」という4つの音が、交響曲全体で繰り返されていることや、その繰り返しによって音楽が様々な雰囲気をかもし出すところをオーケストラを使って子供達に理解させた解説が印象的だった。
 実はこっそりびっくりしていたのは、N響小沢征爾の組み合わせだ。確か小沢征爾と言ったら、N響と喧嘩したとかしないとかで、有名なんじゃなかったか?と思っていたら、やはり解説者の人が「この組み合わせは10年ぶり」と言っていた。千住明の「日本交響曲」も大変素晴らしかった。何より、子供に楽しんでもらうという前提があるので、クラシックをききつけない自分にも分かりやすくて楽しかった。
2)後半
 アラン・ギルバート指揮の北ドイツ放送交響楽団とマリス・ヤンソンス指揮のバイエルン放送交響楽団の二つのオーケストラの下で、日本人のバイオリニスト3人が演奏した。
 アラン・ギルバートという人は、なんだかものすごく楽しそうに指揮をする人だった。この人のお陰で団員全員がものすごく楽しそうに音楽しているように見えた。テレビのこちら側にまで伝わってくる、そういう楽しさだった。北ドイツの方の演奏会は、1つは子供のための演奏会で、もう一つは普通のだった。実は普通の方は観なくて失敗したなーと思った。3時間休みなしはいくらテレビでもきついのだ。
 子供のためのプログラムにはやはり簡単なオーケストラのための説明がついていて、その説明が大変気が利いていた。オーケストラの構成について説明するのだけれど、アラン・ギルバートが日本語で「弦楽器です」とか言うのだ。顔もアジア系の顔をしていて、「あれ?日本語の発音がいいな」と思っていたら、お母さんが日本人だとのこと。木管のパートではクラリネット(オーボエだったかも)の人がチャルメラの音を出してすごい大うけだった。
 北ドイツ放送交響楽団の演奏をきいていて、とても思ったことは、「オーケストラというのは奇跡のようだな」ということだ。何十人もの人間が集まって、その一瞬一瞬に完全に同じことを考えるということはありえないことで、それなのに、指揮者の一振りで心を合わせて音を出す。そういうことは、音楽が自分の体に骨まで染み込んでいて、楽器も自分の体の一部であるような人でないと出来ないことだ。そういう人が、数十人も集まってすこしづづの個性がありつつも音楽を奏でるということが、とても素晴らしいことだと感じられた。そういう演奏だった。でも実はここで感動してたのは甘かったのだ(笑)
 次のマリス・ヤンソンス指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏*1は、すばらしくキラキラとした演奏だった。大雪が降った次の日の、天気がよく澄み切った空気と反射する光のような、まさに光り輝く演奏だった。テレビだというのに思わず拍手してしまったくらいだ。指揮者と団員にとって音楽が染み渡ったものであることだけでなく、音楽と指揮者と団員が完全に一体だった。そういう音楽がこの世にあるのだということが、素晴らしいことに思えた。アンコールの「アルルの女」のファランドールも途中から入ったのに、一瞬でボルテージを上げてみせた。本当に素晴らしかった。
 最後の演目(というか番組構成上の最後)は、彼らの演奏と名バイオリニスト五嶋みどりプロコフィエフだった。五嶋みどりというバイオリニストは、ものすごい集中力を見せる人だった。解説者が「五嶋みどりさんは、その曲を演奏者が如何に生き抜くかというところを見せてくれるバイオリニストです。そういう人はあんまりいない」と言っていたが、まさしく!という感じだった。生き抜くという言葉がぴったりだった。交響楽団の演奏は、その五島みどりの演奏するスペースをぽっかりと空けて、その周囲に厚みを持たせるような、積極的なサポートだった。
 最後に、少しだけ文句を言えば、番組構成が気に入らなかった。「輝く日本人、それぞれの競演」と題している通り、日本人に中心をおいているせいだろうと思うけれど、それにしても五島みどりプロコフィエフを最後にしないで、マリス・ヤンソンスバイエルン放送交響楽団のベートーベンの7番を最後にして欲しかった。実際の音楽祭でもその順だったのだし、音楽のボルテージや力から言っても、バイエルンが後に来た方が、観た方はすごい満足感で終わることが出来たと思うのになぁ。
 ああ、DVD欲しいよ。オーケストラはビジュアルつきのほうがいいなぁ。

*1:演目はベートーベン交響曲第七番